<セCSファーストステージ:ヤクルト0-4巨人>◇第2戦◇14日◇神宮
バッテリーがすべきことを欠き、ヤクルトが敗退した。原-井野が浴びた3発は、結果的にやってはいけないことをやったがゆえに許したものだった。
2回の長野のソロは2死走者なしから。本塁打を最も注意しなければいけない状況で、外角低めを狙った直球が真ん中に入った。4回先頭のマギーに浴びた1発は初球スライダー。昔から外国人打者の入り球は気を付けろと言われるが、これも外角狙いが真ん中へ。そして亀井。まだ2点差の2死一塁で長打だけは警戒しなければならない局面で初球のシュートをアウトローに投げきれず、内角に甘く入って2ランとされた。
集中力の度合いが違う、1球が命取りになりかねない戦い。好打者が失投を逃すはずがなく「甘く入ってしまった」ではすまされない。ヤクルトバッテリーのすべきことを欠いたプレーは、前日の第1戦からあった。小川-中村が初回1死一塁から田中俊に許した二盗。8連敗中の小川崩しに足を絡めてくることが予想されていたが、けん制もクイックモーションもなかった。そして同7回に決められたヒットエンドラン。バッテリーは動いてくることを警戒しなければならない場面でけん制や間合いを長く取る、1球外すといった策を講じなかった。
大げさに言えば1秒たりとも気を抜けない超短期決戦。巨人菅野の投球は、その戦い方を象徴していた。出来が素晴らしかったことは言うまでもないが、攻めていく道中で失投もあった。しかし、その制球ミスは、ほぼストライクゾーンからボールゾーンに外れていくもの。致命傷にはならない。勝たなければならない試合で無安打無得点という期待以上の結果で応えた姿は、まさにエースだった。
ヤクルトナインには、この試合を野球をやめるまで覚えておいてもらいたい。必ず今後の野球人生の財産として生かされるはずだ。(日刊スポーツ評論家)
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谷繫元信が選ぶ真の天才打者はイチローではなかった
『ベースボールマガジン』で連載している谷繁元信氏のコラム「仮面の告白」。ネット裏からの視点を通して、プロ野球の魅力を広く深く伝えている同氏だが、
今回は代打に関して、だ。
キャッチャーとしてマスク越しに見た代打論を語っていきましょう。どういうタイプが嫌で、どういうタイプがくみしやすいのか。
やっぱり、初球からしっかりタイミングを取れて、来たボールに対してスイングできる代打は嫌でしたね。
一方で、代打というのは基本的に、1球でボールを仕留められないだろうと思っていました。その日初めて見る生きたボールを初球から振りにいって、
しっかり合わせてくるバッターというのは皆無に等しかったといっても過言ではありません。
ですから、キャッチャーの立場からすると、とにかくワンストライクは取れるだろう、と。本当の勝負どころ以外の場面では、ピッチャーには
初球ストライクを要求していました。真っすぐでファウルを打たせようとするのか、変化球を見送らせてカウントを整えるのか、そこは判断になるんですけど、
代打イコール、ボールから入って様子を見ようという考えは少なくとも僕にはなかったです。
それだけバッテリーは、代打を迎えた場合、精神的優位に立っているということです。ですから代打にポンと出てきてヒットを打つのは至難のワザなんです。
スタメンで出ている選手というのは、それまでの打席で何度かスイングしたりボールを見る中で、そのスピードに慣れたりしてるわけじゃないですか。
逆にいえば、まったくプロセスがないまま打席に入って、一振りで仕留めることができていた人というのはすごいんです。
そこで思い出したのは広島の前田智徳です。彼の場合は、たとえファーストストライクが取れたからといって、こっちが有利になったとは感じないんです。
追い込まれても普通の野球選手にはないバットコントロールの技術を持っていた。ですから仮にアウトにしても、言葉で表現すると「打ち取った」ではなくて、
「打ち取れた」になるんです。ほかの代打というのは、こう打ち取ってやろうというイメージどおりに「打ち取った」、でも前田の場合は「よかった、打ち取れた」。
それぐらい前田のバッターとしっての質、レベルは傑出していました。バッターボックスでもオーラ、雰囲気は感じましたよ。それだけのバッターだと
いうことをファンの人も含めて周りも認めているし、ピッチャーも感じていたはずです。
もう一人、忘れられないのは僕が一選手としてプレーしていたころの立浪和義さんです。あの人が最後、代打専門になったときは同じチームになって
いたため対戦してないですけど、あの集中力たるや、一筋縄ではいかないという雰囲気を出していましたよ。もし敵だったら、ここで立浪さんが来たら
嫌だなと思ったでしょうね。前田と同じです。
以下全文 週刊ベースボール
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